マロのお仕事はショップ店員
世間を席巻した品物も
時として時代に取り残され
過去の産物となる
その流れは早く
取り残され売れなくなった品は
売場からも追い出される
高価すぎたソレは処分されるわけでもなく
倉庫の片隅にポツンと眠っていた
数年に一度
いまでは使わなくなった技術を学びに
若者が物珍しそうにホコリを払う
今日ショップを訪れた若夫婦
いまでは製造されていない
品を探していると訪れた
なんでも老夫婦にプレゼントしたいが
現在の品は発展しすぎて使いこなせない
懐かしく昔からの手慣れた品が欲しい
そう相談を受け一緒に頭をかかえている若いスタッフ
あっ!
倉庫に駆け出していくマロ
そのホコリまみれの箱を手に取る
箱から取り出し
いにしえと同じ輝きを失わない
その品は凛としていた
何万種もある機種のなかで
偶然にも
若夫婦が探していたのと同じ型番
もう売値もないその品は
大事に使ってもらえるならと
人手に渡っていった
ショップに届いておそらく20年程
売場から下げられ15年以上かな
今日明日にでも
その品を処分する気だったマロ
そう思わなければ
その品の存在を
思い出しさえ出来ずにいただろう
最後の最期まで諦めなければ
奇跡が起きて
道が開けたのだ
長い年月
暗い倉庫の片隅で
主人を待ち続けた
心を持たないその品の
喜びの音が聞こえてきそうだった
奇跡かぁ…
どんなに努力しても
どんなに頑張っても
越えられない壁がある事を思い知らされてきた人生
数カ国を飛び回ってその壁を壊そうとした
無理だった
ダイエットを頑張って
自分に自信が持てたら…
奇跡をマロも起こしたい…そう思えた
心地良い1日だった
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