マロの職場に
マロがまだ体重が52kgだったころから
135kg…までになった経過を見続けている人がいる
別に何も言わない
太ってしまったマロが
床に物を落とすと
お腹が突っ掛かって拾う際に転けそうになる
何も言わないけれど
走ってきて拾い上げてくれる
何も言わないけれど
たかが80mほど先の移動に
車を回し送ってくれる
太って免疫力が低下し
風邪をひくと1ヶ月半は治せなかった
職場の喫茶コーナーには
コーヒーと紅茶だけだったが
ある日ショウガ湯も用意しておいてくれた
そして
そっとマロにのど飴を一袋くれた
その中に
ダイエットに効くマッサージの割引券と
女性限定のスポーツジムの案内が入っていた
何も感じなかった
相変わらずその人も何も言わなかった
それからも同じように
落とす前に横から止め
困る前に手を差しのべてくれていた
息苦しかったマロ
ただ歩くそれならできた
ただ会話をしながら歩くとなると
難度が跳ね上り
呼吸が乱れ咳き込む
両手に荷物を山ほど抱えたその人は
合図値だけでいい会話にかえ
歩みをゆっくり合わせてくれる
いつも笑っていた
いつしか何かを感じ始めた。
太っているのに飽きたかな…
そう思った
その人にダイエット宣言はしていない
今日マロは
床にボールペンを落としてしまった
違う場所にいたその人は
勢いよく仕切カーテンを開け
顔を覗かし
心配そうに見ている
ボールペンを拾い上げるマロ
今までなら走ってきて拾い上げてくれていたその人は
決して痩せたね
とは言わない
何も言わないけれど
お互い満面の笑みがこぼれていた
この記事へのコメントはありません。